配偶者控除又は配偶者特別控除の見直しにより、
今年から給与所得者が年末調整において
配偶者控除等を適用する場合は
「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出する必要があります。
◆Q&A
Q.配偶者控除等申告書の提出が必要となるのは?
A.給与所得者本人の合計所得金額が1千万円以下
(給与所得のみの場合は年収1220万円以下)であり、
生計を一にする配偶者の合計所得金額が123万円以下
(同201万6千円未満)の場合に、
配偶者控除又は配偶者特別控除の適用対象となりますので、
該当する方が年末調整において
配偶者控除等の適用を受けるためには、
配偶者控除等申告書の提出が必要となります。
Q.配偶者控除等申告書は、いつ提出する?
A.その年の最後に給与等の支払を受ける日の前日までに、提出します。
Q.年末調整後、申告書に記載した
配偶者の合計所得金額の見積額と確定額に差が生じ、
適用を受ける控除額に変更がある場合は?
A.その年分の源泉徴収票を交付する時までに、
見積額の異動に関する申出があった場合は、
年末調整の再調整を行うことができます。
Q.申告書にマイナンバーの記載は必要?
A.原則、記載する必要がありますが、
①従業員が申告書の余白に
「給与支払者に提供済みのマイナンバーと相違ない」旨を
記載した上で、
給与支払者が確認した旨を表示している場合や、
②記載すべきマイナンバー、
その他の事項を記載した一定の帳簿を備え付けている場合には、
記載を省略できます。
◆申告所得金額は8年連続で増加し過去最高
国税庁が公表した
「平成29事務年度 法人税等の申告事績」によると、
29年度における法人税の申告件数は289万6千件で、
その申告所得金額は過去最高となる70兆7677億円
(前年度比11.5%増)と8年連続で増加し、
申告税額は12兆4730億円(同11.0%増)でした。
また、申告を行った法人のうち99万件(同4.1%増)
が黒字申告となり、
黒字申告の割合は34.2%(同1.0ポイント増)と
7年連続の上昇となりました。
黒字申告1件当たりの所得金額は7150万円
(同7.1%増)となっています。
一方、
6割超を占める赤字法人の申告欠損金額は
13兆7101億円(同15.1%増)で、
1件あたりの欠損金額は719万円(同15.3%増)と、
増加しています。
◆欠損金の「繰越控除」と「繰戻還付」
欠損金が生じた場合に適用できる制度として、
欠損金を繰り越して
翌年度以降に生じた所得金額から控除する「繰越控除」と、
前年度に所得があり法人税を納付していた場合に、
欠損金を前年度に繰り戻すことで法人税の還付を受ける
「繰戻還付」があります。
ただし、
繰戻還付の適用は資本金1億円以下の中小法人等に限られます。
なお、
「繰越控除」における欠損金の繰越期間は9年でしたが、
30年4月以後に開始する事業年度で生じた欠損金から
10年になります。また、
中小法人等以外については控除額に制限がありますが、
30年4月以後の開始事業年度から所得金額の50%が
控除限度額となります。
国税庁は「平成29年分民間給与実態統計調査」を公表しました。
◆平均給与は前年比2.5%増で5年連続増加
調査結果によると、
1年を通じて勤務した給与所得者4945万人
(男性2936万人、女性2009万人、
平均年齢46.0歳、平均勤続年数12.1年)
の平均給与は、前年比2.5%増の432万円となり、
5年連続で増加しました。
男女別では、男性532万円、女性287万円です。
また、平均給与を事業所規模別にみると、
従事員10人未満の事業所では352万円、
10~29人では415万円、
30人以上では454万円となっています。
なお、給与所得者の給与階級別分布では、
300万円超400万円以下が867万人
(構成比17.5%)で最も多く、
次いで200万円超300万円以下が781万人
(同15.8%)で、
400万円以下の給与所得者は
合計2733万人と全体の55.2%を占めています。
◆税額の約5割は1千万円超の給与所得者から
1年を通じて勤務した給与所得者が
源泉徴収により所得税を納税した税額は
9兆7384億円で、
給与総額に占める税額の割合は4.89%でした。
また、給与階級別の税額をみると、
1千万円超の給与所得者は222万人で
全体の4.5%にすぎませんが、
その税額は合計5兆183億円で51.5%を占めます。
なお、昨年から給与収入が1千万円を超える場合の
給与所得控除額は220万円が上限となっていますが、
32年(2020年)以降は
給与収入850万円超の場合に
195万円が控除額の上限となり、
さらに税負担が増加します
(特別障害者の方や
22歳以下の扶養親族がいる方などは負担調整措置があります)。
◎地域別最低賃金の改定……
30年度の改定額は、すべての地域で24円以上
(24~27円)の引上げとなります。
発効日は各都道府県で異なりますが、
10月1日~6日までに発効されるので、
厚労省や労働局のホームページ等で確認します。
◎改正労働者派遣法(27年9月30日施行)に伴う対応……
27年9月30日以降に
契約を締結・更新した派遣労働者について、
①同一の派遣先事業所における派遣の受入れ期間は、
原則3年が限度
(過半数労働組合等から意見聴取することで最大3年延長が可能)、
②①で期間を延長した場合でも、
同一の派遣労働者を派遣先事業所の同一の組織単位
(「課」など)で受入れができる期間は3年が限度です。
◎健康保険被扶養者の手続き変更……
被扶養者を認定する際の身分関係及び
生計維持関係の確認が厳格化され、
「健康保険被扶養者(異動)届」の添付書類の取扱いが
変更になります。
◎社会保険の随時改定における年間平均の取扱い……
定時決定(算定基礎)と同様に、
随時改定(月額変更)についても報酬の月平均額と、
年間の報酬の月平均額とが著しく乖離する場合、
年間平均による保険者算定の申し立てができるようになります。
◎たばこ税の引上げ……
たばこ税の引上げ(1本あたり1円)や、
加熱式たばこの課税方法の見直しが実施されることに伴い、
価格も値上げとなります。
◎NPO法人に係る貸借対照表の公告……
NPO法人は毎年度、
貸借対照表を公告することが義務付けられます。
30年10月1日以後に作成する貸借対照表が対象となりますが、
30年9月30日以前に作成した
直近の貸借対照表も公告する必要があります。
26年からスタートした一般NISAの非課税期間は
最長5年間のため、
26年分の非課税期間は今年で終了となります。
◆ロールオーバー又は課税口座に移管を選択
NISA口座内の上場株式等を売却せずに、
非課税期間終了後も保有する場合は、
非課税期間終了時の時価を取得価額として、
①翌年のNISA口座の非課税投資枠に移す
(ロールオーバー)、
又は②特定口座などの課税口座に移すことを選択できます。
①を選択した場合、
引き続き譲渡益・配当等が5年間非課税となりますが、
翌年の非課税投資枠120万円を使用するため、
ロールオーバーした分だけ新規投資枠が減ります。
また、
ロールオーバーする上場株式等の時価が
120万円を超える場合でも、
すべて移すことが可能(上限なし)ですが、
その場合は非課税投資枠を使い切るため新規投資できません。
なお、口座を開設している金融機関に対して、
あらかじめ「非課税口座内上場株式等移管依頼書」を
提出する必要があります。
◆課税口座に移管する場合の注意点
②を選択した場合、
課税口座へ移管後に生じた譲渡益・配当等は課税され、
譲渡損失は損益通算や繰越控除が可能になりますが、
譲渡損益を計算する際の取得価格は
非課税期間終了時の時価となります。
例えば、100万円で購入し、
非課税期間終了時に70万円となった投資信託を
課税口座へ移管した場合、取得価格は70万円になります。
そのため、
移管後に値上がりし100万円で売却した場合は、
30万円の譲渡益となり課税されることになります。
なお、移管の際に必要な手続きはありません。
31年度税制改正に向けた各府省庁からの要望には、
主に以下のような事項があります。
◎中小企業の設備投資減税の延長等……
適用期限が30年度末までとなっている
①中小企業経営強化税制、
②商業・サービス業・農林水産業活性化税制、
③中小企業投資促進税制をそれぞれ2年間延長し、
①、②は必要な拡充を行う。
◎新設法人への繰越欠損金制度の拡充……
資本金1億円以上の新設法人について、
繰越欠損金を所得金額の100%まで控除できる期間を
設立10年目(現行7年目)まで延長する。
◎空き家に係る譲渡所得の特別控除の要件緩和……
空き家の譲渡所得の3千万円特別控除について、
要件を緩和し、
被相続人が老人ホーム等に入居していた場合も対象とする。
また、
譲渡後に家屋の耐震リフォーム又は除却を行った場合も対象に加える。
◎外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充……
すでに消費税免税店の許可を受けている事業者が、
地域のお祭りや商店街のイベント等に出店する場合に、
簡素な手続きにより免税販売することを認める。
◎教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の拡充等……
領収書に代えて明細書の提出が可能となる範囲を
3万円以下(現行1万円以下)に引上げる。
◎結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の拡充等……
贈与者としておじ・おばを、受贈者として甥・姪を対象とする。
◎その他……
*研究開発税制の拡充等、
*NISA制度の恒久化等、
*金融商品に係る損益通算範囲の拡大、
*地域未来投資促進税制の拡充等、
*個人事業者の事業承継に係る負担軽減措置の創設、など。
◆補助金の申請等における注意喚起
来年10月から消費税率10%への引上げとともに、
飲食料品(酒類・外食を除く)と
一定の新聞を8%に据え置く軽減税率制度が導入される予定です。
同制度への対応が必要となる中小企業を対象に、
複数税率対応レジの導入や
受発注システムの改修などに係る費用の一部を補助する
「軽減税率対策補助金」は、
既に約7万以上の事業者が利用していますが、
申請の誤りや不適切な案件が増えていることから
経産省・中企庁が注意喚起を行っています。
なお、申請に対する現地調査も実施されており、
実際には軽減税率対象商品を販売していない事業者が
申請していたケースなどが発見されています。
◆複数税率対応レジの導入等支援のポイント
同補助金のうち、
複数税率対応レジの導入等支援(A型)に関するポイントは、
以下のとおりです。
◎申請受付期限……
31年9月30日までに導入または改修を終え、
代金の支払いを完了したものについて、
31年12月16日までに交付申請を行います。
◎対象となる事業者……
レジを使用して日頃から軽減税率対象商品を販売しており、
将来にわたり継続的に販売するため
複数税率対応レジを導入等が必要な事業者が対象です。
一時的な販売は該当しません。
◎リースの場合……
リース(ファイナンスリースに限る)による
レジの導入等も補助対象となります。
なお、指定リース事業者との共同申請が必須です。
◎中古のレジを導入した場合……
登録中古販売事業者から導入した場合に限り対象となります。
◎既に複数税率対応レジを設置している場合……
そのレジの入替、改修等に係る費用は申請できません。