毎年11月は「下請取引適正化推進月間」として、
下請法(下請代金支払遅延等防止法)の
普及・啓発が集中的に行われます
(今年度の標語は「無茶な依頼 しないさせない 受け入れない」)。
また、消費税率引上げ後の転嫁拒否行為について、
中小事業者に対する悉皆的な書面調査も今後実施されます。
◆下請法による親事業者の義務と禁止行為
下請法は、物品の製造や修理、情報成果物作成、
役務提供の委託取引が対象となり、
取引内容に応じて規定されている
資本金区分に該当する場合に適用されます。
対象取引の親事業者に対しては、
発注時の書面交付など4項目の義務と、
受領拒否(注文した物品等の受領を拒む)や、
支払遅延(支払期日までに代金を支払わない)、
減額(あらかじめ定めた代金を減額する)、
買いたたき
(通常の対価に比べて著しく低い代金を不当に定める)など
11項目の禁止事項が定められています。
◆消費税の転嫁拒否行為を禁止する措置
今月から消費税率が10%に引上げられましたが、
消費税転嫁対策特措法では、
大規模小売事業者(売上高100億円以上など)と
継続して取引している事業者や、
法人と継続して取引している資本金3億円以下の事業者や
個人事業者等に対して、減額や買いたたき、
本体価格での交渉の拒否などにより
消費税の転嫁を拒む行為を禁止しています。
特に、税込価格で対価を定めている場合に
消費税率引上げ後も対価を据え置く行為や、
販売する商品が軽減税率の対象品目であることを理由に
10%が適用される商品の仕入価格を据え置く行為は
「買いたたき」に該当しますので、注意しましょう。
政府は、台風19号による災害を
「特定非常災害」に指定しました。
これに伴い、被災者の権利や利益の保全等を図るため、
運転免許などの許認可等に係る有効期限の延長や、
期限内に履行されなかった届出等の義務の猶予など、
行政手続きに関する特別措置が適用されます。
この特別措置により、
相続放棄等の熟慮期間についても延長が行われます。
◆「相続放棄」と「限定承認」
被相続人(亡くなった方)の財産を相続する場合に、
相続人は現預金や土地等の財産だけではなく、
借金等の債務も含めて相続することになります。
これを「単純承認」といいます。
一方、借金等の債務が財産より明らかに多い場合などは
「相続放棄」をすることで、
被相続人の全ての財産と債務を引き継がないことができます。
また、借金等が不明な場合などに、
相続で得た財産を限度として債務を引き継ぐ
「限定承認」という方法もあります
(手続きが煩雑なため注意が必要)。
◆相続放棄等をする場合の「熟慮期間」
相続人が相続放棄や限定承認を選択する場合は原則、
「相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内」に
家庭裁判所でその旨を申述する必要があり、
この期間を「熟慮期間」といいます。
今回の特別措置では、
特定非常災害発生日(令和元年10月10日)において、
災害救助法が適用された区域に住所を有していた相続人を対象に、
熟慮期間が令和2年5月29日まで延長されます。
なお、熟慮期間内に相続放棄等をしなかった場合は原則、
単純承認をしたものとみなされます。
台風19号により各地で甚大な被害が出ています。
現在、災害救助法が13都県315市区町村に適用され、
災害復旧貸付やセーフティネット保証4号などの
被災中小企業対策が実施されます。
◆法人の資産が損害を受けた場合
◎滅失・損壊した資産等……
商品や店舗などが滅失又は損壊した場合の損失や、
損壊した資産の取壊し、
土砂等を除去する費用は損金になります。
◎資産の評価損……
棚卸資産や固定資産等に著しい損傷が生じ、
時価が帳簿価額を下回る場合には、
その差額を評価損として計上できます。
◎復旧のための費用……
損傷を受けた固定資産
(評価損を計上したものを除く)について、
原状回復の補修や、
被災前の状態を維持する補強工事などに支出した費用は、
修繕費として損金になります。
◎災害損失欠損金の繰戻しによる還付……
災害のあった事業年度において
災害損失欠損金額がある場合には、
その事業年度開始前2年以内
(青色申告ではない場合は前1年以内)に
開始した事業年度に納付した法人税額から、
還付請求ができます。
◆個人の住宅や家財などが損害を受けた場合
◎所得税の軽減又は免除……
住宅や家財などに損害を受けた方は、
「雑損控除(所得控除)」又は
「災害減免法による所得税の軽減免除(税額控除)」の
どちらか有利な方法を選択することで、
所得税の全部又は一部を軽減することができます。
◎住宅ローン控除の特例……
災害によって住宅ローン控除の適用を受けている
住宅用家屋に居住できなくなった場合、
その後も引き続き控除の適用を受けることができます。
消費税の軽減税率制度が導入されたことに伴い、
課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるには、
区分経理に対応した帳簿及び区分記載請求書等の保存が
要件となります。
また、消費税額の計算は、
売上げと仕入れを税率ごとに区分して
記帳した帳簿等に基づき行いますが、
税率ごとの区分が困難な中小事業者
(前々事業年度における課税売上高が5千万円以下の事業者)については一定期間、
以下の特例により計算できます。
◆売上税額の計算の特例
売上げを税率ごとに区分することが困難な中小事業者は、
課税売上げに次のいずれかの割合を乗じて
軽減税率の対象となる課税売上げを算出できます。
◎小売等軽減仕入割合の特例(卸売・小売業)……
卸売・小売業に係る課税仕入れに占める
軽減税率の対象となる売上げにのみ要する
課税仕入れの割合。
◎軽減売上割合の特例……
通常の連続する10営業日の課税売上げに占める
同期間の軽減税率の対象となる課税売上げの割合。
◎上記が困難な場合(主に軽減対象品目を販売する事業者)
……割合を50%とみなして計算。
◆仕入税額の計算の特例
仕入れを税率ごとに区分することが困難な中小事業者は、
次のいずれかの特例が認められます。
◎小売等軽減売上割合の特例(卸売・小売業)……
卸売業・小売業に係る課税売上げに占める
軽減税率の対象となる課税売上げの割合により、
仕入税額を計算できる。
◎簡易課税制度の届出の特例……
課税期間中に届出書を提出することで
簡易課税制度の適用が可能。
来月から消費税率引上げに関連する制度以外にも、
以下のような制度等が実施されます。
◎地域別最低賃金の改定……
都道府県ごとに定められている地域別最低賃金が改定され、
すべての地域で26円以上(26~29円)の
引上げとなります。
改定額の発効日は各都道府県で異なりますが、
10月1日~6日までに順次発効されます。
◎地方税共通納税システムの運用開始……
パソコンから全ての地方公共団体に
地方税の電子納税ができるシステムが開始され、
複数の地方公共団体への一括納付や、
地方公共団体が指定する金融機関以外からの納付などが
可能になります。手数料は無料です。
◎電子帳簿等保存制度の改正……
スキャナ保存の承認を受けている保存義務者は、
承認を受ける前に作成等した重要書類(領収書など)について、
適用届出書を提出した場合は一定要件を満たすことで、
スキャナ保存が可能となります。
また、新たに業務を開始した個人事業主に対する
承認申請書の提出期限の特例
(業務開始から2ヵ月以内)が創設されます。
◎電気通信事業法の改正……
携帯電話料金に関する新たなルールとして、
端末と通信料金のセット割引の禁止や、
2年定期契約の解約金を1千円以下にするなどの規制が行われます。
10月以降の契約から適用され、
既存の契約は従来どおりです。
◎水道法の改正……
水道の基盤強化を図るため、
地方公共団体が水道事業者等としての
位置付けを維持しつつ、
水道施設に関する公共施設等運営権
(施設の所有権を地方公共団体が所有したまま、
運営権を民間事業者に設定する方式)
を民間事業者に設定できる仕組みの導入などを行います。