2019年10月29日火曜日

「下請法」と「消費税転嫁対策特措法」





毎年11月は「下請取引適正化推進月間」として、




下請法(下請代金支払遅延等防止法)の




普及・啓発が集中的に行われます




今年度の標語は「無茶な依頼 しないさせない 受け入れない」)。




また、消費税率引上げ後の転嫁拒否行為について、




中小事業者に対する悉皆的な書面調査も今後実施されます。




◆下請法による親事業者の義務と禁止行為




下請法は、物品の製造や修理、情報成果物作成、




役務提供の委託取引が対象となり、




取引内容に応じて規定されている




資本金区分に該当する場合に適用されます。




対象取引の親事業者に対しては、




発注時の書面交付など4項目の義務と、




受領拒否(注文した物品等の受領を拒む)や、




支払遅延(支払期日までに代金を支払わない)、




減額(あらかじめ定めた代金を減額する)、




買いたたき




(通常の対価に比べて著しく低い代金を不当に定める)など




11項目の禁止事項が定められています。




◆消費税の転嫁拒否行為を禁止する措置




今月から消費税率が10%に引上げられましたが、




消費税転嫁対策特措法では、




大規模小売事業者(売上高100億円以上など)と




継続して取引している事業者や、




法人と継続して取引している資本金3億円以下の事業者や




個人事業者等に対して、減額や買いたたき、




本体価格での交渉の拒否などにより




消費税の転嫁を拒む行為を禁止しています。




特に、税込価格で対価を定めている場合に




消費税率引上げ後も対価を据え置く行為や、




販売する商品が軽減税率の対象品目であることを理由に




10%が適用される商品の仕入価格を据え置く行為は




「買いたたき」に該当しますので、注意しましょう。





2019年10月24日木曜日

相続放棄等をする場合の「熟慮期間」





政府は、台風19号による災害を




「特定非常災害」に指定しました。




これに伴い、被災者の権利や利益の保全等を図るため、




運転免許などの許認可等に係る有効期限の延長や、




期限内に履行されなかった届出等の義務の猶予など、




行政手続きに関する特別措置が適用されます。




この特別措置により、




相続放棄等の熟慮期間についても延長が行われます。




◆「相続放棄」と「限定承認」




被相続人(亡くなった方)の財産を相続する場合に、




相続人は現預金や土地等の財産だけではなく、




借金等の債務も含めて相続することになります。




これを「単純承認」といいます。




一方、借金等の債務が財産より明らかに多い場合などは




「相続放棄」をすることで、




被相続人の全ての財産と債務を引き継がないことができます。




また、借金等が不明な場合などに、




相続で得た財産を限度として債務を引き継ぐ




「限定承認」という方法もあります




(手続きが煩雑なため注意が必要)。




◆相続放棄等をする場合の「熟慮期間」




相続人が相続放棄や限定承認を選択する場合は原則、




「相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内」に




家庭裁判所でその旨を申述する必要があり、




この期間を「熟慮期間」といいます。




今回の特別措置では、




特定非常災害発生日(令和元年10月10日)において、




災害救助法が適用された区域に住所を有していた相続人を対象に、




熟慮期間が令和2年5月29日まで延長されます。




なお、熟慮期間内に相続放棄等をしなかった場合は原則、




単純承認をしたものとみなされます。





2019年10月16日水曜日

災害により損害を受けた場合の税務





台風19号により各地で甚大な被害が出ています。




現在、災害救助法が13都県315市区町村に適用され、




災害復旧貸付やセーフティネット保証4号などの




被災中小企業対策が実施されます。




◆法人の資産が損害を受けた場合




◎滅失・損壊した資産等……




商品や店舗などが滅失又は損壊した場合の損失や、




損壊した資産の取壊し、




土砂等を除去する費用は損金になります。




◎資産の評価損……




棚卸資産や固定資産等に著しい損傷が生じ、




時価が帳簿価額を下回る場合には、




その差額を評価損として計上できます。




◎復旧のための費用……




損傷を受けた固定資産




(評価損を計上したものを除く)について、




原状回復の補修や、




被災前の状態を維持する補強工事などに支出した費用は、




修繕費として損金になります。




◎災害損失欠損金の繰戻しによる還付……




災害のあった事業年度において




災害損失欠損金額がある場合には、




その事業年度開始前2年以内




(青色申告ではない場合は前1年以内)に




開始した事業年度に納付した法人税額から、




還付請求ができます。




◆個人の住宅や家財などが損害を受けた場合




◎所得税の軽減又は免除……




住宅や家財などに損害を受けた方は、




「雑損控除(所得控除)」又は




「災害減免法による所得税の軽減免除(税額控除)」の




どちらか有利な方法を選択することで、




所得税の全部又は一部を軽減することができます。




◎住宅ローン控除の特例……




災害によって住宅ローン控除の適用を受けている




住宅用家屋に居住できなくなった場合、




その後も引き続き控除の適用を受けることができます。





2019年10月8日火曜日

中小事業者の売上・仕入税額の計算特例





消費税の軽減税率制度が導入されたことに伴い、




課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるには、




区分経理に対応した帳簿及び区分記載請求書等の保存が




要件となります。




また、消費税額の計算は、




売上げと仕入れを税率ごとに区分して




記帳した帳簿等に基づき行いますが




税率ごとの区分が困難な中小事業者




前々事業年度における課税売上高が5千万円以下の事業者)については一定期間、




以下の特例により計算できます。




◆売上税額の計算の特例




売上げを税率ごとに区分することが困難な中小事業者は、




課税売上げに次のいずれかの割合を乗じて




軽減税率の対象となる課税売上げを算出できます。




◎小売等軽減仕入割合の特例(卸売・小売業)……




卸売・小売業に係る課税仕入れに占める




軽減税率の対象となる売上げにのみ要する




課税仕入れの割合。




◎軽減売上割合の特例……




通常の連続する10営業日の課税売上げに占める




同期間の軽減税率の対象となる課税売上げの割合。




◎上記が困難な場合(主に軽減対象品目を販売する事業者)




……割合を50%とみなして計算。




◆仕入税額の計算の特例




仕入れを税率ごとに区分することが困難な中小事業者は、




次のいずれかの特例が認められます。




◎小売等軽減売上割合の特例(卸売・小売業)……




卸売業・小売業に係る課税売上げに占める




軽減税率の対象となる課税売上げの割合により、




仕入税額を計算できる。




◎簡易課税制度の届出の特例……




課税期間中に届出書を提出することで




簡易課税制度の適用が可能。





2019年10月2日水曜日

10月から始まる主な制度(消費税関連以外)





来月から消費税率引上げに関連する制度以外にも、




以下のような制度等が実施されます。




◎地域別最低賃金の改定……




都道府県ごとに定められている地域別最低賃金が改定され、




すべての地域で26円以上(26~29円)の




引上げとなります。




改定額の発効日は各都道府県で異なりますが、




10月1日~6日までに順次発効されます。




◎地方税共通納税システムの運用開始……




パソコンから全ての地方公共団体に




地方税の電子納税ができるシステムが開始され、




複数の地方公共団体への一括納付や、




地方公共団体が指定する金融機関以外からの納付などが




可能になります。手数料は無料です。




◎電子帳簿等保存制度の改正……




スキャナ保存の承認を受けている保存義務者は、




承認を受ける前に作成等した重要書類(領収書など)について、




適用届出書を提出した場合は一定要件を満たすことで、




スキャナ保存が可能となります。




また、新たに業務を開始した個人事業主に対する




承認申請書の提出期限の特例




(業務開始から2ヵ月以内)が創設されます。




◎電気通信事業法の改正……




携帯電話料金に関する新たなルールとして、




端末と通信料金のセット割引の禁止や、




2年定期契約の解約金を1千円以下にするなどの規制が行われます。




10月以降の契約から適用され、




既存の契約は従来どおりです。




◎水道法の改正……




水道の基盤強化を図るため、




地方公共団体が水道事業者等としての




位置付けを維持しつつ、




水道施設に関する公共施設等運営権




(施設の所有権を地方公共団体が所有したまま、




運営権を民間事業者に設定する方式)




を民間事業者に設定できる仕組みの導入などを行います。