消費税の軽減税率制度が実施されたことに伴い、
原則として税率ごとに区分して
帳簿等に記帳することなどが必要となりました。
◎旧税率が適用される取引がある場合……
今年9月までの消費税率(旧税率)と
軽減税率は同じ8%ですが、
国税と地方税の割合が異なり、
旧税率は「国税6.3%+地方税1.7%」、
軽減税率は「6.24%+1.76%」のため、
区分する必要があります。
◎「店内飲食」と「持ち帰り」の税込価格を統一している場合……
標準税率が適用される「店内飲食」と、
軽減税率が適用される「持ち帰り」を
同一の税込価格で販売している場合でも
適用税率が異なるため、
販売時点の顧客の意思確認などで判定した適用税率に基づき、
区分経理を行う必要があります。
◎誤った税率で計算した税込対価のレシートを交付した場合……
取引の事実に基づく適正な税率で申告する必要があるため、
例えば、標準税率が適用される商品に誤って
軽減税率を適用した税込価格で販売した場合でも、
標準税率の売上として記帳します。
◎誤った税率で計算した税込対価のレシートを受領した場合……
消費税の仕入税額控除の適用には、
取引の事実に基づく「区分記載請求書等」の保存が必要となるため、
再交付を依頼といった対応が必要となります
(税込対価の誤りは「追記」不可)。
◎キャッシュレス・消費者還元(即時充当)に係る消費税の仕入税額控除……
コンビニ等が行っている即時充当
(その場でポイント等相当額を購入金額に充当する方法)を受けた場合、
課税仕入れに係る支払対価の額は
「商品対価の合計額(ポイント等の充当前)」となります。
年末調整の時期が近づいてきました。
◎年末調整の対象者……
原則として「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、
年末まで勤務している方が対象ですが、
*給与総額が2千万円を超える方、
*災害減免法により給与に対する源泉所得税の徴収猶予や
還付を受けた方は対象外です。
なお、年の中途で入社した方が、
前勤務先から給与の支払を受けていた場合、
その給与を含めて年末調整をします
(前勤務先で交付された源泉徴収票が必要)。
◎配偶者控除等の適用……
配偶者控除又は配偶者特別控除の適用は、
本人の合計所得金額が1千万円以下
(給与のみの場合は年収1220万円以下)で、
生計を一にする配偶者の合計所得金額が123万円以下
(同201万6千円未満)の場合が対象です。
年末調整において適用を受ける場合は
「配偶者控除等申告書」の提出が必要となります。
◎扶養控除の適用……
控除対象となるのは、
本人と生計を一にする16歳以上の親族
(6親等内の血族及び3親等内の姻族)で
合計所得金額が38万円以下の場合です。
別居している場合でも常に生活費や療養費を送金しているなど、
本人と生計を一にしている場合であれば対象になります。
◎扶養控除等の判定……
扶養控除や配偶者控除等は、
年末調整を行う時点の現況で判断しますが、
親族などが年の途中で亡くなった場合は、
その時点において判定します。
なお、控除対象者を判定する際の合計所得金額に
非課税所得などは含まれません。
◎生命保険料控除の対象……
契約者が本人以外の親族等でも、
その生命保険料を支払ったことが明らかであれば、
控除の対象とすることができます。
退職金は、
長年の勤労に対する報償的給与として税負担が軽くなるよう、
所得税の取扱いが優遇されていますが、
政府税制調査会は中長期の税制のあり方を示す中期答申において、
働き方や人生設計の多様化を踏まえ、
勤続年数で税負担の差が生じる
退職所得課税の見直しを検討課題の一つに挙げています。
◆退職金から控除額を差し引いた1/2に課税
退職金等の支払いを受けた場合に、
課税対象となる退職所得は
【(退職金-退職所得控除額)×1/2】で算出され、
原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。
退職所得控除額は、
勤続年数(1年未満の端数がある場合は1年)に応じた額となり、
次の算式で計算します。
◎勤続年数20年以下の場合……
40万円×勤続年数
(※80万円未満となる場合は80万円)
◎勤続年数20年超の場合……
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
なお、役員等として勤務した期間が5年以下の方が
役員等勤続年数に対応する退職金の支払を受けた場合は、
【役員退職金-退職所得控除額】が退職所得になります
(1/2とする措置はなし)。
◆退職所得として扱われるものは
小規模企業共済による共済金(準共済金)や、
中小企業退職金共済によって支払われる退職金を一括で受け取る場合、
iDeCo(個人型確定拠出年金)を
一時金で受取る場合なども退職所得として扱われ、
上記と同様に退職所得控除額
(この場合は勤続年数ではなく契約期間)
を差し引いた額の1/2が課税対象となります。
◆キャッシュレス・消費者還元事業の登録状況
中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使った
ポイント還元等を支援する
「キャッシュレス・消費者還元事業」の開始から
1ヵ月が経過しました。
経産省によると現在、
加盟店の登録申請数は約92万店(10月31日時点)、
登録加盟店数は約64万店(11月1日時点)となっています。
本事業の実施期間は来年6月までの9ヵ月間となっており、
登録申請は来年4月まで可能です。
なお、本事業の期間中に登録加盟店が
決済事業者に支払う決済手数料率は3.25%以下に設定され、
さらに手数料の1/3が補助されます。
この決済手数料に係る消費税の取扱いは、
クレジットカードや電子マネーなどの決済手段によって異なります。
◆決済手数料に係る消費税の取扱い
クレジットカードの決済手数料については、
カード会社と直接契約している場合であれば
金銭債権の譲渡に該当することから、
消費税は非課税となります。
一方、契約が決済代行事業者の場合における手数料は
課税取引となります。
また、電子マネーなどの決済手数料は、
決済システムの提供の対価として課税取引です。
なお、決済手数料の1/3補助については、
決済事業者が加盟店に対して、
①一旦全額の手数料を徴収後、
手数料の1/3を支払う方法、
又は②徴収する手数料から予め1/3を控除する方法により行われますが、
これは国庫補助金を財源とした補填金であることから、
消費税の不課税取引になります。
毎年11月は「下請取引適正化推進月間」として、
下請法(下請代金支払遅延等防止法)の
普及・啓発が集中的に行われます
(今年度の標語は「無茶な依頼 しないさせない 受け入れない」)。
また、消費税率引上げ後の転嫁拒否行為について、
中小事業者に対する悉皆的な書面調査も今後実施されます。
◆下請法による親事業者の義務と禁止行為
下請法は、物品の製造や修理、情報成果物作成、
役務提供の委託取引が対象となり、
取引内容に応じて規定されている
資本金区分に該当する場合に適用されます。
対象取引の親事業者に対しては、
発注時の書面交付など4項目の義務と、
受領拒否(注文した物品等の受領を拒む)や、
支払遅延(支払期日までに代金を支払わない)、
減額(あらかじめ定めた代金を減額する)、
買いたたき
(通常の対価に比べて著しく低い代金を不当に定める)など
11項目の禁止事項が定められています。
◆消費税の転嫁拒否行為を禁止する措置
今月から消費税率が10%に引上げられましたが、
消費税転嫁対策特措法では、
大規模小売事業者(売上高100億円以上など)と
継続して取引している事業者や、
法人と継続して取引している資本金3億円以下の事業者や
個人事業者等に対して、減額や買いたたき、
本体価格での交渉の拒否などにより
消費税の転嫁を拒む行為を禁止しています。
特に、税込価格で対価を定めている場合に
消費税率引上げ後も対価を据え置く行為や、
販売する商品が軽減税率の対象品目であることを理由に
10%が適用される商品の仕入価格を据え置く行為は
「買いたたき」に該当しますので、注意しましょう。
政府は、台風19号による災害を
「特定非常災害」に指定しました。
これに伴い、被災者の権利や利益の保全等を図るため、
運転免許などの許認可等に係る有効期限の延長や、
期限内に履行されなかった届出等の義務の猶予など、
行政手続きに関する特別措置が適用されます。
この特別措置により、
相続放棄等の熟慮期間についても延長が行われます。
◆「相続放棄」と「限定承認」
被相続人(亡くなった方)の財産を相続する場合に、
相続人は現預金や土地等の財産だけではなく、
借金等の債務も含めて相続することになります。
これを「単純承認」といいます。
一方、借金等の債務が財産より明らかに多い場合などは
「相続放棄」をすることで、
被相続人の全ての財産と債務を引き継がないことができます。
また、借金等が不明な場合などに、
相続で得た財産を限度として債務を引き継ぐ
「限定承認」という方法もあります
(手続きが煩雑なため注意が必要)。
◆相続放棄等をする場合の「熟慮期間」
相続人が相続放棄や限定承認を選択する場合は原則、
「相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内」に
家庭裁判所でその旨を申述する必要があり、
この期間を「熟慮期間」といいます。
今回の特別措置では、
特定非常災害発生日(令和元年10月10日)において、
災害救助法が適用された区域に住所を有していた相続人を対象に、
熟慮期間が令和2年5月29日まで延長されます。
なお、熟慮期間内に相続放棄等をしなかった場合は原則、
単純承認をしたものとみなされます。
台風19号により各地で甚大な被害が出ています。
現在、災害救助法が13都県315市区町村に適用され、
災害復旧貸付やセーフティネット保証4号などの
被災中小企業対策が実施されます。
◆法人の資産が損害を受けた場合
◎滅失・損壊した資産等……
商品や店舗などが滅失又は損壊した場合の損失や、
損壊した資産の取壊し、
土砂等を除去する費用は損金になります。
◎資産の評価損……
棚卸資産や固定資産等に著しい損傷が生じ、
時価が帳簿価額を下回る場合には、
その差額を評価損として計上できます。
◎復旧のための費用……
損傷を受けた固定資産
(評価損を計上したものを除く)について、
原状回復の補修や、
被災前の状態を維持する補強工事などに支出した費用は、
修繕費として損金になります。
◎災害損失欠損金の繰戻しによる還付……
災害のあった事業年度において
災害損失欠損金額がある場合には、
その事業年度開始前2年以内
(青色申告ではない場合は前1年以内)に
開始した事業年度に納付した法人税額から、
還付請求ができます。
◆個人の住宅や家財などが損害を受けた場合
◎所得税の軽減又は免除……
住宅や家財などに損害を受けた方は、
「雑損控除(所得控除)」又は
「災害減免法による所得税の軽減免除(税額控除)」の
どちらか有利な方法を選択することで、
所得税の全部又は一部を軽減することができます。
◎住宅ローン控除の特例……
災害によって住宅ローン控除の適用を受けている
住宅用家屋に居住できなくなった場合、
その後も引き続き控除の適用を受けることができます。