◆抜本拡充された事業承継税制の特例措置
30年度税制改正において、事業承継税制
(認定を受けた非上場株式を贈与又は
相続等により取得した場合の納税猶予制度)の
特例措置が創設されました。
◎対象株式数の上限撤廃……
全ての議決権株式を納税猶予の対象とします。
◎納税猶予割合の引上げ……
相続時の納税猶予割合を100%に引上げます。
◎雇用維持要件の弾力化……
雇用維持要件(承継後、5年間平均で雇用の8割を維持)
を満たせなかった場合でも、
納税猶予が継続できます
(経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導・助言が必要)。
◎対象者の拡大……
親族外を含む複数の株主から、
最大3人の後継者への承継も対象になります。
◎経営環境変化に対応した減免制度……
事業の継続が困難な事由が生じ、
会社を譲渡・解散した場合には、
その時点での納税額を再計算し、
承継時に計算された納税額との差額を減免できます。
◎相続時精算課税制度の適用範囲の拡大……
贈与者の子や孫以外でも相続時精算課税が適用できます。
◆特例措置を適用するには
この特例措置は適用するには、
①35年(2023年)3月までに、
特例承継計画(後継者や承継時までの経営見通し等を記載)
を都道府県庁に提出する、
②30年1月から39年(2027年)
12月までに贈与・相続等により
株式を取得することを満たす必要があります。
なお、35年(2023年)3月までに
贈与・相続を行う場合は、贈与・相続後に承継計画を
提出することも可能です。
持続的な賃上げ等を促進するため、
30年度税制改正において、
国内雇用者に対する給与等支給額を増額させた場合に
一定割合を税額控除できる所得拡大促進税制が改組されました。
◆主な適用要件等は
要件等は大企業と中小企業で異なります。
なお、税額控除は法人税額の20%が上限です。
◎大企業……
①継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が3%以上及び
②国内設備投資額が当期の減価償却費総額の9割以上である場合に、
給与等支給総額の対前年度増加額の15%が税額控除できます。
また、①及び②に加え、
③教育訓練費が前期・前々期の年平均額から
20%以上増加を満たす場合は、
増加額の20%が税額控除できます。
◎中小企業……
①継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が1.5%以上である場合に、
給与等支給総額の対前年度増加額の15%が税額控除できます。
また、①の増加率が2.5%以上である場合に、
②教育訓練費が前期から10%以上増加、又は
③経営強化法の認定に係る経営力向上計画に記載された
経営力向上が確実に行われたことの証明、
のいずれかを満たす場合は、
増加額の25%が税額控除できます。
◆判定の対象となる「継続雇用者」とは
改正では、上記の要件における「継続雇用者」の範囲も見直され、
前期から当期までの全期間の各月で
給与等の支給を受けた国内雇用者で、
雇用保険の一般被保険者が対象となります。
これにより、
継続雇用者に対する給与等支給額の総額について、
前年度と比べた増加率が判定の基礎となります。
30年度税制改正において、
被相続人等の居住または事業用に使われていた宅地等を
相続により取得した場合に
一定要件を満たせば相続税評価額が大幅に減額される
「小規模宅地等の特例」の適用要件が厳格化されました。
◆「家なき子」に係る特例の対象範囲の見直し
居住用宅地等は、330㎡まで評価額を
80%減額できますが、
この特例を適用できるのは、①配偶者、②同居親族、
③配偶者又は同居親族がいない場合に、
相続開始前3年以内に国内にある自己又は
自己の配偶者が所有する家屋に居住したことがない
別居親族(いわゆる「家なき子」)、です。
改正では③の対象者の範囲について、
*相続開始前3年以内に、
3親等内の親族又は特別関係のある法人が所有する
国内の家屋に居住したことがある方、
*相続開始時において居住の用に供していた家屋を
過去に所有していたことがある方、が除外されます。
30年4月以後に相続等で取得する財産について
適用されますが、改正前の要件を満たしている場合、
経過措置が設けられています。
◆貸付事業用宅地等の対象範囲の見直し
また、貸付事業用宅地等については200㎡まで
評価額を50%減額ができますが、
改正により特例を適用できる貸付事業用宅地等の範囲から、
「相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等
(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行ってい
る場合は除く)」が除外されます。
この改正も30年4月以後の相続等に適用されますが、
改正前から貸付事業の用に供されている宅地等には
適用されません。