◆多くの事業者に区分経理の対応が必要
来年10月から消費税率10%への引上げとともに、
飲食料品(酒類・外食を除く)などを対象とした
軽減税率制度が実施されます。
これに伴い、
軽減税率対象品目の売上げや仕入れがある課税事業者は、
複数税率に対応した請求書等
(区分記載請求書等)の交付や、
売上げや仕入れを税率ごとに区分して
帳簿等に記帳することが必要になります。
そのため、軽減税率対象品目の売上げがない事業者でも、
会議費や交際費として飲食料品を購入する場合など、
軽減税率対象品目の仕入れがあれば区分経理の対応が必要です。
なお、消費税の仕入税額控除の適用には、
区分経理に対応した帳簿及び区分記載請求書等の保存が
要件となります(区分記載請求書等保存方式)。
◆中小事業者に対する税額計算の特例
軽減税率制度実施後の消費税額の計算は、
基本的に売上げと仕入れを税率ごとに区分して
税額計算を行うことになります。
ただし、
売上げ又は仕入れを税率ごとに区分することが困難な
中小事業者(前々事業年度における課税売上高が5千万円以下)
に対しては経過措置として、
次のような税額計算の特例が設けられています。
◎売上税額の計算の特例……
売上げの一定割合を軽減税率の対象売上げとして
売上税額を計算できる。
◎仕入税額の計算の特例……
①仕入れの一定割合を軽減税率の対象仕入れとして、
仕入税額を計算する、
又は②簡易課税制度の届出の特例
(消費税簡易課税制度選択届出書を提出した課税期間から
同制度の適用が可能)を適用できる。
配偶者控除又は配偶者特別控除の見直しにより、
今年から給与所得者が年末調整において
配偶者控除等を適用する場合は
「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出する必要があります。
◆Q&A
Q.配偶者控除等申告書の提出が必要となるのは?
A.給与所得者本人の合計所得金額が1千万円以下
(給与所得のみの場合は年収1220万円以下)であり、
生計を一にする配偶者の合計所得金額が123万円以下
(同201万6千円未満)の場合に、
配偶者控除又は配偶者特別控除の適用対象となりますので、
該当する方が年末調整において
配偶者控除等の適用を受けるためには、
配偶者控除等申告書の提出が必要となります。
Q.配偶者控除等申告書は、いつ提出する?
A.その年の最後に給与等の支払を受ける日の前日までに、提出します。
Q.年末調整後、申告書に記載した
配偶者の合計所得金額の見積額と確定額に差が生じ、
適用を受ける控除額に変更がある場合は?
A.その年分の源泉徴収票を交付する時までに、
見積額の異動に関する申出があった場合は、
年末調整の再調整を行うことができます。
Q.申告書にマイナンバーの記載は必要?
A.原則、記載する必要がありますが、
①従業員が申告書の余白に
「給与支払者に提供済みのマイナンバーと相違ない」旨を
記載した上で、
給与支払者が確認した旨を表示している場合や、
②記載すべきマイナンバー、
その他の事項を記載した一定の帳簿を備え付けている場合には、
記載を省略できます。
◆申告所得金額は8年連続で増加し過去最高
国税庁が公表した
「平成29事務年度 法人税等の申告事績」によると、
29年度における法人税の申告件数は289万6千件で、
その申告所得金額は過去最高となる70兆7677億円
(前年度比11.5%増)と8年連続で増加し、
申告税額は12兆4730億円(同11.0%増)でした。
また、申告を行った法人のうち99万件(同4.1%増)
が黒字申告となり、
黒字申告の割合は34.2%(同1.0ポイント増)と
7年連続の上昇となりました。
黒字申告1件当たりの所得金額は7150万円
(同7.1%増)となっています。
一方、
6割超を占める赤字法人の申告欠損金額は
13兆7101億円(同15.1%増)で、
1件あたりの欠損金額は719万円(同15.3%増)と、
増加しています。
◆欠損金の「繰越控除」と「繰戻還付」
欠損金が生じた場合に適用できる制度として、
欠損金を繰り越して
翌年度以降に生じた所得金額から控除する「繰越控除」と、
前年度に所得があり法人税を納付していた場合に、
欠損金を前年度に繰り戻すことで法人税の還付を受ける
「繰戻還付」があります。
ただし、
繰戻還付の適用は資本金1億円以下の中小法人等に限られます。
なお、
「繰越控除」における欠損金の繰越期間は9年でしたが、
30年4月以後に開始する事業年度で生じた欠損金から
10年になります。また、
中小法人等以外については控除額に制限がありますが、
30年4月以後の開始事業年度から所得金額の50%が
控除限度額となります。
国税庁は「平成29年分民間給与実態統計調査」を公表しました。
◆平均給与は前年比2.5%増で5年連続増加
調査結果によると、
1年を通じて勤務した給与所得者4945万人
(男性2936万人、女性2009万人、
平均年齢46.0歳、平均勤続年数12.1年)
の平均給与は、前年比2.5%増の432万円となり、
5年連続で増加しました。
男女別では、男性532万円、女性287万円です。
また、平均給与を事業所規模別にみると、
従事員10人未満の事業所では352万円、
10~29人では415万円、
30人以上では454万円となっています。
なお、給与所得者の給与階級別分布では、
300万円超400万円以下が867万人
(構成比17.5%)で最も多く、
次いで200万円超300万円以下が781万人
(同15.8%)で、
400万円以下の給与所得者は
合計2733万人と全体の55.2%を占めています。
◆税額の約5割は1千万円超の給与所得者から
1年を通じて勤務した給与所得者が
源泉徴収により所得税を納税した税額は
9兆7384億円で、
給与総額に占める税額の割合は4.89%でした。
また、給与階級別の税額をみると、
1千万円超の給与所得者は222万人で
全体の4.5%にすぎませんが、
その税額は合計5兆183億円で51.5%を占めます。
なお、昨年から給与収入が1千万円を超える場合の
給与所得控除額は220万円が上限となっていますが、
32年(2020年)以降は
給与収入850万円超の場合に
195万円が控除額の上限となり、
さらに税負担が増加します
(特別障害者の方や
22歳以下の扶養親族がいる方などは負担調整措置があります)。