今月から施行された民法(相続法)改正により、
相続人以外の親族が被相続人の療養看護等を行った場合に、
その寄与に応じた金銭の支払を相続人に請求できる
特別寄与料の制度が創設されました。
◎特別寄与者……
被相続人に対して無償で療養看護
その他の労務の提供をしたことにより
被相続人の財産の維持又は増加について
特別の寄与をした相続人以外の親族
(6親等内の血族、3親等内の姻族)が
特別寄与者に該当し、
相続開始後、特別寄与料の支払を相続人に請求できます。
なお、相続放棄した方などは特別寄与者になれません。
◎特別寄与料の請求……
特別寄与料の支払については、
特別寄与者と相続人の協議によって決めることになりますが、
当事者間の協議が調わない場合は、
特別寄与者が家庭裁判所に処分を請求することで
特別寄与料を定めることができます。
ただし、相続開始及び相続人を知った時から6ヵ月以内、
又は相続開始の時から1年以内に請求する必要があります。
◎特別寄与者の課税関係……
特別寄与料は相続人から支払われるものですが、
被相続人から遺贈により取得したものとみなして、
相続税が課税されます(相続人ではないため2割加算の対象)。
なお、特別寄与料の取得による相続税の申告は、
特別寄与料の支払額が確定したことを知った日の翌日から
10ヵ月以内に行う必要があります。
◎特別寄与料を支払った相続人の課税関係……
相続人が支払う特別寄与料の額は、
相続税の課税価格から控除されます。
相続税の申告期限後に特別寄与料の支払額が確定した場合は、
確定したことを知った日の翌日から
4ヵ月以内に更正の請求を行います。
先月閉会した通常国会において成立した
「中小企業強靱化法」が、本日から施行となります。
◆災害対策など事業継続力強化の取組を支援
同法は、中小企業の災害対応力を高めるとともに、
円滑な事業承継を促進するため、
①事業継続力強化に関する計画(事業継続力強化計画)の認定制度を創設し、
認定事業者に対して支援措置を講じる
「改正中小企業等経営強化法」、
②今年度税制改正で個人事業者の事業承継税制が創設されたことに伴い、
遺留分に関する民法特例の対象を拡大した
「改正承継円滑化法」などが盛り込まれています。
このうち①は、自然災害などの被害を受けた際の
事業継続計画(BCP)の策定を支援するものです。
中小企業者が単独又は複数事業者で連携して行う事業継続力強化計画を作成し、
認定を受けることで、
信用保証枠の追加や低利融資といった金融支援のほか、
税制においても防災・減災設備を取得等した場合の支援措置が利用できます。
◆防災・減災設備を取得等した場合の税制措置
税制の支援措置は、
認定を受けた事業継続力強化計画に基づき、
一定の防災・減災設備(特定事業継続力強化設備等)を取得等して事業の用に供した場合に、
取得価額の20%の特別償却が適用できます。
対象となる設備は、
自家発電機や排水ポンプ等の「機械装置(100万円以上)」、
制震・免震ラックや衛星電話等の「器具備品(30万円以上)」、
防火シャッターや排煙設備等の「建物附属設備(60万円以上)」です。
なお、本税制は本日から令和3年(2021年)3月までの間に取得等した設備に適用されます。
国税庁は、法人税基本通達等を一部改正し、
法人向け定期保険等の取扱いを見直しました。
◆最高解約返戻率に応じて一定割合を資産計上
改正通達では、法人が契約し、
役員等を被保険者とする定期保険及び第三分野保険
(がん保険や医療保険等)の保険料に関する取扱いを統一した上で、
保険期間が3年以上の定期保険等であり、
最高解約返戻率が50%を超えるものに加入して支払った保険料は、
次のように最高解約返戻率に応じて
一定割合を資産計上(損金算入を制限)します。
◎最高解約返戻率が50%超70%以下となる場合……
保険期間の前半40%に相当する期間は、
支払保険料の40%を資産計上(60%を損金算入)します。
ただし、被保険者一人当たりの年換算保険料相当額が
30万円以下の場合は資産計上の必要はなく、
期間の経過に応じて損金算入できます。
◎最高解約返戻率が70%超85%以下となる場合……
保険期間の前半40%に相当する期間は、
支払保険料の60%を資産計上(40%を損金算入)します。
◎最高解約返戻率が85%超となる場合……
保険期間開始から最高解約返戻率となる期間の終了までは、
「支払保険料×最高解約返戻率×70%(保険期間開始から10年経過までは90%)」を資産計上(残額を損金算入)します。
◆改正通達の適用時期は
改正通達は、
令和元年7月8日以後の契約に係る定期保険
又は第三分野保険の保険料について適用されます
(解約返戻金相当額のない短期払の定期保険等は令和元年10月8日以後の契約に適用)。
なお、既契約の保険料への遡及適用はありません。
国税庁は7月1日、令和元年分の路線価を公表しました。
全国の標準宅地(約32万地点)における評価基準額は
全国平均で前年比1.3%のプラスとなり、
4年連続で上昇しています。
◆相続等での土地評価額の基準となる路線価
路線価は相続税や贈与税において
土地等の評価額を算定する際の基準となるもので、
道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額です。
相続等で取得した土地の評価方法には、
路線価方式と倍率方式があり、
路線価方式は土地の形状等に応じて
補正した路線価を面積に乗じて算出します。
一方、倍率方式は路線価が定められていない土地の評価方法となり、
固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。
平成27年以降、相続税の基礎控除額は
「3千万円+600万円×法定相続人数」に引下げられていることから、
相続財産で大きな割合を占める土地の評価額を把握しておくことが重要です。
◆「小規模宅地等の特例」の適用で評価減
また、被相続人の居住または事業用に使われていた
宅地等を相続により取得した場合は、
一定要件を満たすことで評価額を大幅に減額できる
「小規模宅地等の特例」の適用がポイントになります。
居住用宅地等については、
同特例により330㎡まで評価額を80%減額できますが、
適用できるのは原則、
配偶者や被相続人と同居していた親族が取得した場合です。
ただし、配偶者や同居親族がいない場合に限り、
相続開始前3年以内に持ち家に居住したことがないなどの
一定要件を満たす別居親族(いわゆる「家なき子」)であれば適用できます。