30年分の贈与税の申告は、2月1日から始まります(3月15日まで)。
◆申告が必要となる主なケース
30年中に個人から財産の贈与を受けた方で、
申告が必要となる主なケースは次の通りです。
◎110万円超の贈与を受けた場合……
暦年課税の基礎控除額は、
受贈者ごとに年間110万円なので、
贈与者の人数に関わらず贈与を受けた財産の合計額が
110万円を超える場合は申告が必要です。
なお、直系尊属(父母や祖父母など)から
20歳以上の方が贈与を受けた場合、
その財産に係る贈与税額の計算は
「特例税率」が適用されます。
◎相続時精算課税を適用する場合……
原則60歳以上の父母・祖父母からの贈与について、
暦年課税に代えて相続時精算課税
(特別控除額2500万円)を適用する場合は、
期限内の申告が必要です。
なお、同制度は贈与者ごとに選択できますが、
選択した贈与者が亡くなるまで継続して適用されます。
◎住宅取得等資金の非課税措置を適用する場合……
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の
非課税措置を適用する場合は、
期限内の申告が必要です。
30年中に住宅用家屋の新築等に係る契約を締結した場合の非課税限度額は、
受贈者ごとに700万円(省エネ等住宅は1200万円)です。
◎配偶者控除の特例を適用する場合……
婚姻期間が20年以上である配偶者からの居住用不動産又は
居住用不動産の購入資金の贈与について、
最高2千万円まで控除できる特例を受ける場合は、
期限内の申告が必要です。
なお、同じ配偶者からの贈与について一度しか適用できません。
◆還付申告は1月から可能
大部分の給与所得者の方は年末調整で所得税が精算されているため、
確定申告をする必要はありませんが、
医療費控除などの
年末調整では受けることができない控除を適用する場合は、
還付を受けるための申告(還付申告)を行う必要があります。
還付申告については、
確定申告期間(30年分は2月18日~3月15日)
に関係なく1月から行うことができ、期間は5年間です。
◎医療費控除……
本人又は生計を一にする配偶者や親族のために支払った
医療費から保険金など補填される金額を差し引き
10万円(所得金額200万円未満の方は、その5%)
を超える場合、所得控除ができます。
セルフメディケーション税制
(定期健康診断などの取組を行う方に係るスイッチOTC医薬品の購入費の一定額を所得控除)との選択適用です。
◎雑損控除……
災害等によって、
生活に通常必要な住宅や家財などの資産について
損害を受けた場合などに、所得控除ができます。
◎寄附金控除……
国や地方公共団体などに対して支出した
特定寄附金が2千円を超える場合、所得控除できます。
なお、還付申告を行う場合は、
ふるさと納税のワンストップ特例を適用できないため、
寄附金控除額の計算に含める必要があります。
◎住宅ローン控除(初回のみ)……
住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得等をした場合、
年末のローン残高を基に計算した金額を税額控除できます。
2年目以降は年末調整で控除が受けられます。
◎国際観光旅客税の適用開始……
1月7日以後、日本から出国する方
(日本人の海外渡航や、訪日外国人の帰国など)を対象に、
出国1回につき1000円が課されます
(航空券等の代金に上乗せして徴収)。
なお、適用日前に航空券等を購入している場合は原則、
適用されません。
◎自筆証書遺言の方式緩和(1月13日施行)……
民法(相続法)改正により、
自筆証書遺言に添付する財産目録については
自書でなくてもよいものとされ、
目録をパソコンで作成したり、
通帳のコピーなどを添付できるようになります
(財産目録の各頁に署名押印が必要)。
◎e-Tax利用の簡便化……
個人納税者の方は、
マイナンバーカードとICカードリーダライタを使用する
「マイナンバーカード方式」と、
IDとパスワード
(税務署で職員と対面による本人確認を行った上で発行)
による「ID・パスワード方式」の2つの方式で
e-Taxが利用できるようになります。
◎休眠預金等の発生開始……
金融機関で入出金等の取引が10年以上ない預金等
(休眠預金等)を民間公益活動に活用する
休眠預金等活用法(昨年1月施行)により、
対象となる休眠預金等が今月から発生します。
なお、休眠預金等となった場合でも、
金融機関に通帳やキャッシュカード、
本人確認書類などを持参することで
引き出すことができます。
◎地震保険料の改定……
保険料は都道府県や建物の構造によって異なりますが、
全国平均で約3.8%の引上げとなります。
また、長期契約(2~5年)に適用される割引率
(長期係数)も改定され、
保険期間3~5年の割引率が縮小します。
◎個人事業者の事業承継税制(納税猶予)の創設……
個人事業者が事業(不動産貸付事業等を除く)
の用に供していた土地、建物及び一定の減価償却資産を、
後継者(承継計画や経営承継円滑化法の認定が必要)が
相続又は贈与により取得し、事業を継続する場合は、
担保の提供を条件に相続税又は贈与税の納税が猶予されます。
なお、
特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例との併用はできません。
31年(2019年)1月以後の相続又は贈与に適用。
◎特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の見直し……
被相続人等の事業(貸付事業を除く)
の用に供していた宅地等を相続等で取得し、
事業を引き継ぐなどの要件を満たす場合に、
400㎡まで相続税評価額を80%減額する特例の対象から、
「相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等
(一定の場合を除く)」が除外となります。
31年4月以後の相続等に適用
(ただし、同日前から事業の用に供していた宅地等には適用しない)。
◎防災・減災設備投資減税の創設……
中小企業等経営強化法の改正を前提に、
事業継続力強化計画(仮称)に基づき一定の
防災・減災設備を取得等した場合は、
取得価額の20%の特別償却ができます。
経営強化法の改正の施行日以後に適用。
◎商業・サービス業・農林水産業活性化税制の見直し……
経営改善により売上高又は
営業利益が年2%以上向上することについて、
認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが
適用要件に加えられます。
31年4月以後に適用(経過措置あり)。
◎その他……
*研究開発税制の見直し、
*外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充、など。
本日、第197回臨時国会が閉会します。
成立した主な改正法等は次のとおりです。
◎入管法等の改正……
人材確保が困難な業種における
外国人労働者の受入れ拡大を図るため、
新たな在留資格「特定技能」を創設します。
「特定技能1号」は
相当程度の知識又は経験を必要とする技能を持つ
外国人が対象となり、
在留期間は最長5年で、家族帯同は原則できません。
「特定技能2号」は
熟練した技能を持つ外国人が対象となり、
在留期間は更新可能で、家族帯同も認められます。
また、
法務省の外局として「出入国在留管理庁」を新設します。
一部を除き、31年(2019年)4月に施行。
◎水道法の改正……
水道事業の経営基盤の強化を図るため、
自治体が水道施設を所有したまま
運営権を民間事業者に設定できる
「コンセッション方式」を導入できるようにします。
また、
複数の自治体間の広域的な連携を推進するための措置が
講じられます。一部を除き、公布日から1年以内に施行。
◎入場券不正転売禁止法の創設……
スポーツや音楽などの興行に関する
チケットの不正転売を防止するため、
転売を禁止する旨が明示され、
販売時に本人確認を行っているなどの
要件を満たすチケットを対象に、
営利目的での転売を禁止し、罰則
(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が
設けられました。
公布日から6ヵ月経過した日から施行。
◎新天皇の即位に関する祝日……
来年に限り、新天皇が即位される5月1日と、
「即位礼正殿の儀」が行われる
10月22日を祝日にします。
祝日に挟まれた日を休日とする祝日法の規定により、
来年のゴールデンウイークは10連休になります。
来年1月から、e-Tax利用の簡便化が実施され、
個人納税者の方は「マイナンバーカード方式」と
「ID・パスワード方式」の2つの方式で
e-Taxを利用できるようになります。
◆Q&A
Q.マイナンバーカード方式とは?
A.マイナンバーカードとICカードリーダライタを利用して、
e-Taxへログインするだけで、
e-Taxを開始できます。
利用するための申請書などは不要です。
なお、e-Taxにログインする際や
申告等データに電子署名を行う際に、
マイナンバーカードのパスワードが必要となります。
Q.ID・パスワード方式とは?
A.マイナンバーカードや
ICカードリーダライタを持っていない場合でも、
e-Tax用のIDとパスワードを利用して、
国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」から
e-Taxによる送信ができます。
IDとパスワードは、
税務署で職員と対面による本人確認を行った上で、
発行されます。
Q.来年1月以降、従来の方法でe-Taxはできる?
A.利用者識別番号や電子証明書を使った従来の方法も、
引き続きe-Taxによる電子申告ができます。
Q.スマートフォンからe-Taxは利用できる?
A.来年1月から、スマートフォンでも国税庁HP上の
「確定申告書等作成コーナー」で、
所得税の確定申告書の作成ができるようになり、
ID・パスワード方式を利用して
e-Taxによる電子申告ができます。
また、給与所得者(年末調整済み)で、
医療費控除又は寄附金控除を適用して申告する方は、
「スマホ専用画面」を利用できます。
今年7月に成立した民法等(相続法)改正について、
施行期日が政令で定められました。
◆来年1月から段階的に施行される改正法
相続法が約40年ぶりに大幅に見直され、
配偶者居住権の新設をはじめ、
遺産分割や遺言制度に関する見直しなど、
多岐にわたる改正が実施されます。
改正法の施行期日は原則として、
31年(2019年)7月1日ですが、
一部の規定は施行期日が異なり、
以下のように段階的に施行されます。
◎自筆証書遺言の方式緩和(31年1月13日)……
自筆証書遺言を作成する際、
添付する財産目録は自書でなくてもよいものとされ、
パソコンで作成した目録や通帳のコピー等の添付が
可能になります。
◎原則的な施行(31年7月1日)……
相続された預貯金債権について、
遺産分割前にも払戻しが受けられる制度の創設や、
相続人以外の親族が無償で
被相続人の療養看護等を行った場合、
相続人に対して金銭請求ができる制度の創設のほか、
遺留分制度や相続の効力等に関する
見直しなどが行われます。
◎配偶者居住権の新設(32年4月1日)……
配偶者が相続開始時に被相続人の建物に住んでいた場合、
遺産分割が終了するまでの間(最低でも6ヵ月間)
は建物を無償で使用できる権利(配偶者短期居住権)や、
配偶者に終身または一定期間、
建物の使用を認める権利(配偶者居住権)が新設されます。
◎法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設
(32年7月10日)……
自筆証書遺言に係る遺言書は現状、
自宅で保管するケースが多く、
紛失や相続人による隠匿、
改ざんなどのおそれがありますが、
法務局において保管できるようになります。